2026年6月、味の素の株主総会で行われたヴィーガン団体の抗議活動がXで大きな話題になりました。
なかでも注目を集めたのが、PETA Asiaで活動する今井レイラ氏です。
さらに過去に行われた「豆香房」前での抗議動画まで掘り返され、「さすがにやりすぎではないか」という批判が一気に広がりました。
ただ、今回の騒動を追っていくと、人々が反発したのはヴィーガンという考え方そのものではなさそうです。
なぜ味の素は抗議の対象になっているのか。
そして、なぜここまで大きな反発が起きたのでしょうか。
話題の経緯と背景を整理します。
目次
味の素株主総会で何が起きた?
今回の騒動の発端となったのは、味の素の株主総会で行われた抗議活動です。
PETA Asiaのサポーターらは会場周辺で動物実験の廃止を訴え、小型の檻に入るパフォーマンスなどを実施しました。
PETAは以前から味の素の株式を保有し、株主として動物実験の見直しを求めてきた団体です。
そのため、総会で質問や提案を行うこと自体は株主として認められた権利の範囲といえます。
しかし、今回Xで拡散した動画では檻に入る演出や派手な抗議手法が注目され、
「また今年もやっている」
「毎年恒例になっている」
といった反応が相次ぎました。
さらに、後藤たけし氏の投稿を引用したXユーザー「あーぁ」氏の投稿によって、過去の活動まで再び注目を集めることになります。
味の素の株主総会前に嫌がらせしてたこのヴィーガンのおばさん、ジャコウネコのフンから作るコーヒーを販売する豆香房の前でも、便器からコーヒーをすくって配布するという嫌がらせをしていた模様。
迷惑行為された会社や店はこのおばさんを威力業務妨害で訴えた方がいい pic.twitter.com/Od1VfHaRiJ https://t.co/0zIYrFt3D4
— あーぁ (@sxzBST) June 22, 2026
ここで批判が大きくなった理由は、株主総会の出来事だけではありませんでした。
過去の抗議活動と結び付けられたことで、「いつも同じような迷惑行為を繰り返している」という印象が強まったのです。
味の素はなぜヴィーガン団体の抗議対象になるのか
味の素が抗議対象になっている最大の理由は、PETAが問題視している動物実験です。
PETAによると、味の素は長年にわたり食品や成分の安全性確認のため、動物実験を実施、あるいは資金提供してきました。
一方で味の素側も動物実験に関する方針を公表しており、2021年にはポリシーの改定も行っています。
ただ、PETAは
「法律で義務付けられていない実験まで続けている」
と主張しています。
つまり今回の対立は、調味料そのものを巡る話ではありません。
「安全性確認のための動物実験をどこまで認めるべきか」
という価値観の違いから生まれているのです。
実際、こうした議論は海外でも珍しくありません。
化粧品メーカーや食品メーカーに対して、動物実験の廃止を求める運動は世界各地で行われています。
ただ、日本で大きな反発を招きやすいのは主張そのものではなく伝え方です。
内容より先に手法が目に入る。
今回の炎上も、まさにその構図だったのかもしれません。
今井レイラとは何者?これまでの活動を整理
今井レイラ氏は、PETA Asiaの広報・キャンペーン担当として活動するヴィーガン活動家です。
2011年頃からヴィーガン生活を続け、2016年頃から日本国内でも本格的な動物権利活動を行っています。
活動テーマは幅広く、
- 動物実験反対
- 毛皮反対
- 水族館反対
- 畜産動物保護
- ファストフード企業への抗議
などに取り組んできました。
また、肉フェス周辺で血のりを使ったパフォーマンスを行ったり、店舗前で抗議活動を実施したりするなど、視覚的なインパクトを重視した活動スタイルでも知られています。
本人やPETA側から見れば、無関心な人にも問題を知ってもらうための表現なのでしょう。
実際、話題になるという意味では一定の効果を上げています。
ただし、注目を集めることと共感を得ることは別の話です。
今回の炎上でも、活動内容そのものより活動スタイルへの反発が目立っていました。
豆香房の抗議動画が再拡散した理由
今回の騒動で特に強い反応を呼んだのが、過去に行われた豆香房前での抗議動画でした。
PETAはジャコウネココーヒー(コピ・ルアク)の販売に反対しており、豆香房の前で抗議活動を行っています。
動画では本物のトイレが設置され、そこからコーヒーをすくって紙コップに注ぐパフォーマンスが行われていました。
看板には、
「残酷は糞だ」
というメッセージも掲げられています。
PETA側の意図は、コピ・ルアクが動物搾取の上に成り立っていることを訴えるためだったと説明されています。
しかし、SNSで広がった反応はまったく別のものでした。
「不衛生すぎる」
「個人店を狙うのはおかしい」
「営業妨害ではないのか」
といった批判が中心だったのです。
ここで問題視されたのは、コピ・ルアクの是非そのものではありません。
抗議の見せ方でした。
トイレという強烈なイメージには確かに拡散力があります。
ただ、その一方で強い嫌悪感も生みます。
注目を集めることには成功しても、共感を得ることにはつながらなかった。
そんな受け止め方をした人が多かったようです。
批判が広がったのはヴィーガンだからではない?
今回の反応を追うと、一つ興味深い点があります。
それは、批判の多くがヴィーガン思想そのものではなく、抗議手法に向けられていることです。
動物愛護や動物福祉の考え方そのものを否定する声は、実はそれほど多くありません。
むしろ目立ったのは、
「動物を大切にする考えは理解できる」
「でもやり方がおかしい」
という反応でした。
人は自分と異なる価値観そのものよりも、その価値観を押し付けられたと感じたときに強く反発します。
今回広がった怒りも、その感覚に近かったのではないでしょうか。
トイレを使ったパフォーマンス。
繰り返される過激な演出。
店舗や企業への直接抗議。
そうした行動が積み重なった結果、多くの人には「啓発活動」ではなく**「不快な押し付け」**として映ったのでしょう。
PETA側は動物の苦しみに目を向けてほしいと考えています。
一方で批判する側は、まず活動そのものに不快感を抱いています。
同じ出来事を見ていても、両者が見ているものは違います。
だから議論がかみ合わないのです。
今回の炎上は、単純なヴィーガンと肉食の対立ではありません。
本当に問われているのは、動物福祉というテーマを社会へどう伝えるのかという方法論です。
その意味では、味の素や今井レイラ氏だけの話ではなく、あらゆる社会運動に共通する課題を映し出した騒動だったのかもしれません。