2026年2月20日に公開された映画『夜勤事件 The Convenience Store』。
監督は永江二朗、原作はChilla’s Artの同名ホラーゲームです。
映画「#夜勤事件」
本日より公開。
自分がやれることは全部やりました。
ここまできたら、一人でも多くの方に見ていただけることを願うしかありません。
ご覧くださった方にお願いです。
賛否両論あっていいのでSNSや口コミで広めてください。
この映画を育ててください。
何卒宜しくお願い致します。 pic.twitter.com/vsgH6gM3Zb— 永江二朗@映画「夜勤事件」2026年2月20日公開❗️ (@eijigumi) February 19, 2026
深夜のコンビニを舞台に、じわじわと迫る怪異を描いた作品として話題を呼んでいますが、鑑賞後に「時系列がおかしくない?」「ラストの笑顔の意味が分からない」という声がSNSを中心に多数上がっています。
実はこの「よく分からない」という感覚こそが、監督の仕掛けたトリックの核心部分なのです。
公開からわずか6日(2月26日現在)、Filmarksやブログ(mink0212、cinemalamourなど)では「前半の怪異が全部嘘だった衝撃」「エンドロール後の笑顔が後味悪い」という声が急増し、SNSで再考察ブームとなっています。
本記事では、映画の時系列を丁寧に整理しながら、ラストシーンの意味や各キャラクターの行動の理由を徹底的に考察していきます。
もちろんネタバレ全開なので、まだ鑑賞していない方はご注意ください。
目次
映画夜勤事件の時系列を整理!店長殺害の4日間に何が?
「なんかこの映画、話の順番がちぐはぐじゃないか?」と感じた方は多いはずです。
でもその違和感は、あなたの読解力が足りないわけでも、映画が雑に作られているわけでもありません。
主人公・田鶴結貴乃(演:南琴奈)の語る「怪異体験」が、最初から最後まで真っ赤な嘘だったから矛盾するのです。
主人公の語りがすべて嘘なので、時系列が合わないのは当然です。
この構造を「信頼できない語り手(unreliable narrator)」と呼びます。
刑事小説や心理サスペンスでは定番の手法ですが、Jホラーに持ち込んだ点が本作の最大の特徴といえるでしょう。
映画前半は何だったのか?
映画の前半部分は、警察署の取り調べ室で結貴乃が刑事・猿渡真司(竹財輝之助)に語る「回想形式」で進みます。
怪しい老婆、監視カメラに映る謎の影、差出人不明のSDカード…これらすべてが、結貴乃が自分の犯行を隠すために作り上げた作り話です。
正直、これには驚かされましたよね。
実際に何が起きていたかを整理すると、話は一気にシンプルになります。
結貴乃はコンビニの店長・鶴川俊朗を自らの手で殺害し、死体を地下室に隠していた。
それだけです。
怪異も呪いも、すべては「自分が犯人ではなく被害者である」と思わせるための演出でした。
4日間の本当の出来事
殺害当日(Day 0)から警察に通報するDay 4まで、実際に起きていたことを時系列で見ていくと、結貴乃の用意周到さが浮かび上がってきます。
まずDay 0、殺害当日です。
コンビニ近辺でエリアマネージャーと店長が逢い引きしていたところを、結貴乃は待ち伏せしていました。
赤いワンピース姿、つまりこのコンビニの土地にまつわる一家心中事件の「母親幽霊」を完全に模倣した格好で現れ、店長の両目を五寸釘で抉って殺害します。
エリアマネージャーは恐怖で逃走し、通報もしませんでした。
重要なのは、この時点で結貴乃がすでに土地の過去を調べ尽くしていたという点です。
2009年に起きたとされる一家心中事件、父親が妻の目玉を抉ったという詳細、SDカードが呪いの媒体になるという設定…これらを事前にすべて把握した上で、犯行に及んでいます。
Day 1からDay 3の間、結貴乃は犯行を隠蔽するための準備を着々と進めていきます。
一家心中の殺害映像をコピー加工した自作SDカードを4枚用意し、「差出人不明」で自分宛に送る準備をする。
監視カメラ映像の改ざんも行い、後から語れる「怪異体験のメモ」まで作成していたと考えられます。
この期間に先輩店員・船橋卓也(関哲汰)を排除するための計画も、ホームレスと一緒に立て始めていました。
そしてDay 4、死体から異臭が発生します。
エリアマネージャーが「確認に来る」形で状況が動き、結貴乃は自ら通報します。
警察が到着したあと、取り調べで「ここ4日間の怪異体験」を語り始める。
これが映画前半の正体です。
「時系列が合わない」が最大の伏線
視聴者が感じた「ホームレスに教えてもらう前から呪いの外見を知っていた?」という疑問は、実は正しい指摘です。
呪いを「知らないフリ」をしてホームレスから教えてもらうシーンは、取り調べで使うために結貴乃が作り上げたフィクションだったわけです。
映画後半では猿渡真司刑事の視点に切り替わり、同じ怪現象が「猿渡一人の時にしか起きない」ことが明かされます。
これが「怪異が幻覚だった」ことの証明です。
前半と後半を見比べたとき、初めてこの映画の全貌が見えてくる構造になっているのではないでしょうか。
結貴乃がラストで笑う理由は?母親の幽霊と重なる恐怖!
映画本編が終わり、エンドロールが流れ切った後に映し出されるシーン。
取り壊されたコンビニの跡地で、結貴乃が五寸釘を拾います。
そして地下室へのフラッシュバック。
母親幽霊の顔が、ゆっくりと結貴乃の顔に変わっていき、にやりと笑う。
あのラストシーンの意味が分からなかった、という方も多いのではないでしょうか。
実はこのシーンに、映画全体のテーマが凝縮されています。
「勝利の嘲笑」と「怪物の完成」
結貴乃がラストで笑う理由は、ひとことで言えば「完全犯罪を成功させた勝利の笑み」です。
刑事にSDカードを見せることで呪いを移し、刑事の赤ちゃんを犠牲にする。
自分も守り、仕送り先の母親も守り切った。
誰も自分を疑っていない。
あの笑顔は、そういう「勝ったぞ」という感情の表出でしょう。
しかしそれだけではなく、もう一層の意味が重なっています。
結貴乃が店長殺害の際に行った「目玉を五寸釘で抉る」という行為は、2009年の一家心中事件で父親が母親にした行為の完全な再現です。
つまり結貴乃は、意図的に怪異の「外見」を模倣しただけでなく、怪異の「行為」そのものを自らの手で実行した。
この瞬間に、彼女は「呪いを利用した人間」から「呪いの新たな器」へと変容したのではないかと考えられます。
地下室のシーンで母親幽霊の顔が結貴乃に変わっていくのは、まさにその「変容の完成」を視覚的に見せているシーンです。
物理的には生身の人間である結貴乃が、精神的・象徴的に「次の母親役」として怨念の連鎖を継承した、ということを示しているのでしょう。
観客も連鎖に巻き込まれている
この映画には、もうひとつ背筋が冷たくなる仕掛けがあります。
映画を観た私たちは、刑事がSDカードを視聴したのとまったく同じ行為をしているわけです。
つまり「映画(=SDカード)を見た観客も、結貴乃の呪いの連鎖に参加している」というメタ構造が成立します。
Jホラーの名作『リング』でも、貞子のビデオを見た人間が呪いに巻き込まれましたが、本作はそれを「観客自身」に適用している点でさらに踏み込んでいるといえるでしょう。
「意味が分からない」という感想を抱かせること自体が、この映画の狙いのひとつなのかもしれません。
エンドロール後に追加映像を置くのも、映画館を出た後まで怖さを引きずらせるための「最後の一撃」です。
笑顔の意味が分かった瞬間、結貴乃のことが怖くなるか、あるいは妙に清々しくなるか、そのどちらかの感情が来るはずです。
ホームレスが船橋を殴った理由は?刑事の子供に起きた謎!
ここまで読んで「でも、ホームレスがなぜ先輩の船橋卓也を殴ったんだ?」という疑問が残っている方もいるでしょう。
そして「刑事の子供はどうなったの?」という点も、映画内では明確には描かれていません。
この2つは、映画の「後味の悪さ」を最後まで担う重要なピースです。
ホームレスは共謀者だった
映画の中でホームレスは「呪いの解説者」として登場し、結貴乃に呪いの仕組みを教える役割を担っているように見えます。
しかし実際には、このホームレスは結貴乃の計画に最初から組み込まれた共謀者です。
先輩店員・船橋卓也(関哲汰)は夜勤担当として現場をよく知っており、結貴乃の不自然な行動や死体発見前後の気配に気づく可能性がありました。
彼を証言不能にしておくことが、計画の安全のために必要だったのでしょう。
だから結貴乃が地下室に誘い込んだタイミングで、ホームレスが背後から船橋を殴り、気絶したところをロッカーに押し込んだ。
これで船橋の供述は「エリアマネージャーの不倫疑惑」程度にしか届かず、結貴乃の犯行は隠蔽されたままになります。
俳優の関哲汰は撮影中「ずっとロッカーの中にいました」と語っており、そのシーンの撮影が相当な回数に及んだことが伺えます。
それだけ監督がこの「ロッカーに押し込む」という場面に意味を持たせたかったということでもあるでしょう。
赤いお守りの真実
霊媒師的な人物から渡される赤いお守りについても、「これが結貴乃を守ったのでは?」という考察が一部で見られます。
しかし結論から言えば、あのお守りは何の効力も持っていません。
結貴乃が無事だったのは、SDカードを刑事に見せることで呪いを移転させることに成功していたからです。
お守りのおかげではなく、冷静な計算と行動の結果として自分を守り切った。
むしろあの赤いお守りも、「私は怪異に怯えていた被害者だ」という印象を作るための演出道具のひとつだったと見るのが自然でしょう。
刑事の赤ちゃんに何が起きたか
映画終盤、猿渡真司刑事の妻・果歩(加藤夏希)は無事だったことが分かります。
しかしナレーションは「ただ、お腹の赤ちゃんは…」というところで止まります。
生死が明言されないまま映画は終わります。
ホームレスが説明した呪いのルールは「一番大事なものが奪われる」というものでした。
猿渡刑事にとって、生まれたばかり(あるいは生まれる前)の我が子こそが「一番大事なもの」だったはずです。
そのルール通りに事が運んだとすれば、赤ちゃんは亡くなったか、少なくとも何らかの被害を受けたと考えるのが自然な解釈でしょう。
このあたりの「明言しない怖さ」こそ、Jホラー特有の後引く恐怖感だと思いませんか。
結貴乃の動機と「人間が怪物になる」テーマ
店長を殺した具体的な動機は映画内では明言されていません。
ただ伏線として、パワハラ的な一人夜勤の強要や経済的な搾取(母親への仕送りで生活が苦しいという描写)が示されています。
エリアマネージャーとの不倫関係を目撃し、何らかの怒りや恨みが積み重なっていた可能性も十分あるでしょう。
注目したいのは、結貴乃が「呪いを利用しよう」と思いついた発想力です。
土地の過去を調べ、怪異の外見を模倣し、SDカードを自作し、ホームレスを共謀者に引き込み、刑事を罠にかける。
これだけのことを、一人の夜勤アルバイトが設計したわけです。
ゲーム版の「純粋な被害者である主人公」を映画が「冷酷な加害者」に反転させた最大のポイントは、ここにあるといえるでしょう。
原作ゲーム版ではVHSテープを「見るか・送り返すか・捨てるか」という選択肢がプレイヤーに与えられていました。
映画はその「送る」という選択を、主人公が積極的な意思を持って他人に押し付ける悪意に昇華させています。
監督・永江二朗が手がけた「きさらぎ駅」シリーズでも見られる「日常の中に潜む違和感」の演出が、今作では「人間こそが最も恐ろしい怪物だ」というテーマとして結実しています。
Chilla’s Artのゲームは全般的に「登場人物が全員どこか嫌なやつ」というのが特徴のひとつで、その路線を映画でも継承しつつ、より明確な「主人公の悪意」として描き切ったのが本作の肝でしょう。
この映画の本当の怖さは「人間」にある
映画『夜勤事件』は、幽霊や呪いよりも人間の悪意の方がずっと恐ろしいということを、丁寧な構造で見せてくれる作品です。
前半の怪異体験がすべて嘘だったと分かった瞬間、主人公への見方が180度変わります。
ラストの笑顔の意味が分かった瞬間、背中に冷たいものが走ります。
2回目に見ると、結貴乃の証言の細かい部分がいかに計算されているかに気づけるはずで、そのときに初めてこの映画の完成度が実感できるのかもしれません。
「怖い映画」ではなく「後味が悪い映画」として意図的に作られた本作は、鑑賞後にじわじわと効いてくるタイプのホラーです。
心のどこかに引っかかる感じが残るとしたら、それはもう監督の術中にはまっているということでしょう。
ぜひ2回目の鑑賞で、結貴乃の証言をすべて「疑いの目」で見直してみてください。
きっと、また別の発見があるはずです。