大阪万博の着物ショーの件に対する記事のアイキャッチ

2025年に開催される『大阪・関西万博』の関連イベントで、ある着物ショーが大きな議論を呼びました。

演出の中で登場したのは、天皇陛下のみが着用を許されている装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」を模した衣装です。

SNSではすぐに拡散され、「これは不敬だ」「伝統を軽んじているのでは?」といった批判の声が相次ぎました

文化の魅力を伝えるはずのイベントが、なぜここまで問題視されたのか?

そして、どこまでが“紹介”で、どこからが“不敬”とされるのか?

今、あらためて考える必要がありそうです。

黄櫨染御袍とは?天皇だけがまとう特別な装束

黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)は、天皇陛下専用の伝統装束です。

その名のとおり「黄櫨(こうろ)」という木で染めた、赤茶色のような色合いが特徴です。

雛人形の装いで見かけたことがある人も、いるかもしれませんね。

この御袍は、即位の儀式などでのみ着用される非常に格式の高い衣

近年では、令和元年(2019年)の即位礼で、天皇陛下が実際にお召しになりました。

その意味をふまえると、ただの“和装の一種”ではないことがわかります。

問題になった万博ショーとは?

話題となったのは、2024年4月26日に行われた京都きもの学院によるイベント。

このショーは、きもの文化の魅力を広く伝える目的で企画されました。

その中で行われた「十二単ショー」では、皇室にちなんだ衣装が次々に登場。

そして第3部で、黄櫨染御袍をイメージした衣装を着たモデルが登場した瞬間、SNSで反応が広がります。

  • 「これは天皇陛下だけのものでは?」
  • 「万博という場でやるのは不適切では?」

そんな声が一気に上がり、「不敬だ」との批判が噴出する結果となりました。

京都きもの学院の謝罪内容

こうした批判を受けて、主催者の京都きもの学院は、2024年5月12日に公式サイトで謝罪コメントを発表しました。

そこでは、

「黄櫨染御袍を忠実に再現したつもりはない」
「あくまで伝統文化を広める意図で行った」

という趣旨の説明がなされました。

また、宮内庁に対する確認は行っていなかったことも明かされ、

「その必要性を検討すべきだった」
「皇室に対する敬意が足りなかった」

と反省の言葉が述べられています。

このように、意図がどうであれ、その受け止め方に配慮が足りなかったことは認めた形です。

世間の反応と厳しい指摘

SNSやコメント欄では、さまざまな意見が寄せられました。

とくに目立ったのが、京都きもの学院への落胆です。

「専門機関なのに、どうしてこんな判断を?」

「学生がやったならまだしも、プロがこれでは信用できない」

という声もありました。

中には、

「“誤解を招いた”という謝罪文がもう誤解している」
「本質をわかっていないのでは?」

という、表現そのものに対する指摘もあります。

また、

「神社での撮影会でも、巫女の衣装を着ると“不敬”にあたる場合がある」

というコメントもあり、装束には目に見えない“境界”があると感じている人が多いようでした。

「紹介」と「不敬・冒涜」のちがいはどこ?

伝統文化を紹介することは、ほんとうに大切だと思います。

私自身、きものや和の文化を見かけると、もっとたくさんの人に知ってほしいと感じることがあります。

でも、どんなに良かれと思っても、受け取り方は人それぞれなんですよね。

今回の万博のショーのように、皇室に関わるものが登場した場合、より敏感に反応されることもあると改めて感じました。

とくに「不敬」や「冒涜」といった言葉が出てくるのは、その文化が持つ精神的な意味や歴史の重みが大きいからではないでしょうか。

もちろん、「どこまでがOKで、どこからがアウトか」という明確なルールはありません。

だからこそ、“どう見られるか”を意識して行動することが、今の時代にはより大切なのかもしれません。

実際に、SNSなどで見かけた意見を参考にすると、「これは紹介ではなく不敬では?」と感じられたポイントには、こんな傾向があるように思いました。

判断のポイント リスペクト(紹介) 不敬・冒涜とされやすい行為
歴史や意味の理解 背景を調べて伝える 見た目だけで使ってしまう
当事者との対話 関係者に確認や相談をする 一方的に演出する
利用の目的 文化を広めたい気持ちがある 話題性や商売だけが目的
神聖性への配慮 特別な意味があることを尊重する ただの衣装として扱ってしまう

こうして見ると、ちょっとした意識のちがいが、大きな誤解や批判につながることもあるのだと感じます。

今回の主催者も、「文化の素晴らしさを知ってもらいたい」という気持ちで企画をしていたと思います。

ただ、その“伝え方”や“見せ方”が、一部の人たちにとっては不適切に映ってしまったのかもしれません。

私自身も、こうした出来事を見るたびに、「文化を伝えるって難しいなあ」と思います。

でも、だからこそ、敬意を持って丁寧に向き合う姿勢が大事なんじゃないかと思います。

伝統文化を扱うときに必要なこと

今回の万博の着物ショーは、「文化の魅力を伝えたい」という気持ちから企画されたものでした。

ですが、黄櫨染御袍という“特別な意味を持つ装束”を扱ったことで、大きな批判を受けました。

伝統文化には、それぞれの歴史や背景、そして精神的な意味があります。

紹介するには、それらをしっかり理解し、伝える努力が求められます。

とくに、皇室や神聖な儀式に関わるものを扱うときは、いつも以上に慎重になる必要があるでしょう。

「知らなかった」「悪気はなかった」では、済まないこともあるのです。

文化は、ただの“デザイン”ではありません。

大切にされてきた意味と、それを守ってきた人たちの想いがあります。

だからこそ、紹介するときはリスペクトの気持ちを忘れずにいたいと、今回の出来事から強く感じました。

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