無敗神話を築いてきた那須川天心が、ついに初黒星。
井上拓真に判定で敗れるという予想外の展開に、ネットでは「弱い」の声まで飛び交っています。
では本当にそうなのか──。
スタイルや経験、そしてリング上で浮かび上がった“見えない差”を探りながら、2人の戦いを改めて紐解いてみませんか。
那須川天心が井上拓真に完敗!試合の概要と反応まとめ
【ボクシング】那須川天心、井上拓真に判定負け 正座して謝罪https://t.co/ejYCmtvxTP
判定を聞いた天心は手を叩いて勝者を称えた。拓真には「またお願いします」と話し、観客に向け正座して頭を下げた。那須川はキックボクシング、総合を含め公式戦55戦目での初黒星となった。 pic.twitter.com/iEJoQb0c0j
— ライブドアニュース (@livedoornews) November 24, 2025
“神童”がついに敗れる日が来てしまいました——。
2025年11月24日、東京・TOYOTA ARENAで開催されたWBC世界バンタム級王座決定戦。
この日の主役は、ボクシング界に旋風を巻き起こしてきた那須川天心と、あのモンスター井上尚弥の弟、井上拓真です。
結果は、3-0の判定で井上拓真の勝利。
スコアは116-112が2人、117-111が1人。最大6点差の完敗となりました。
那須川にとってこれは、プロボクシング転向後初の黒星。
そして、キックボクシング時代からの公式戦55戦目で初めての敗北でもあります。
まさに“初黒星”という大きな節目。
試合後の空気も、SNSの反応も、重く、そして熱くなりました。
試合の序盤は、那須川がペースを握っていました。
左のストレートやトリッキーなフェイント、抜群のスピードで井上を揺さぶり、「これ天心あるぞ」というムードに。
…が、中盤以降はガラリと流れが変わります。
井上拓真の堅実で粘り強いボディ攻撃、タイミングを計ったカウンター。
いわば“崩さない職人ボクシング”で、那須川のスピードを封じていったんです。
後半は明らかに那須川の手数が落ち、疲労の色も見えるように。
そして注目されたのが、試合後の“土下座”。
リング中央で正座して四方に礼をする姿は、SNSでも大反響。
「潔すぎる」「泣けた」「なんだか武士みたい」という声もあれば、「演出っぽくてちょっと…」という冷めた意見も。
X(旧Twitter)では、「負けて強くなるタイプだと思う」「逆にファンになった!」といった励ましの声が目立ちました。
一方で、「やっぱり世界レベルでは通用しなかったか…」という辛口コメントもチラホラ。
とにもかくにも、“無敗”という肩書きが外れた那須川天心。
ここからどう立ち直るのか、そして再戦の可能性はあるのか——。
次の展開が、ますます気になりますよね。
那須川天心はなぜ負けた?弱いと言われる3つの理由
那須川天心が「弱い」とまで言われてしまった今回の敗戦。
キックでは無敗、“神童”と称された男に何が起きたのか——。
そもそも天心は、これまで8戦全勝(2KO)と順調にボクシングキャリアを積み、今回が念願の世界初挑戦でした。
しかし、結果は完敗。
では、なぜ?
その理由は大きく3つに分けられます。
① 経験値の差は想像以上だった
まず最初に挙げたいのが、圧倒的な経験の差です。
天心はボクシング転向からまだ2年7ヶ月ほど。
試合数はわずか8戦と、世界挑戦者としてはかなり“スピード昇格”の部類です。
それに対して井上拓真は、今回が21戦目。
過去にはWBAとWBCの世界タイトルを手にし、世界の舞台で幾度も苦い経験を積んできた本物の“歴戦ボクサー”です。
たとえるなら、高速道路でいきなり車線変更したばかりのドライバーと、20年無事故のベテランタクシー運転手が同じコースで戦うようなもの。
技術がどうこうというより、状況判断力そのものが違うんです。
実際、試合では中盤から拓真のベテランらしい“崩れないボクシング”が光りました。
ボディ、カウンター、距離感のコントロール。
どれも天心のテンポを奪うには十分な精度で、徐々にペースを握られていきました。
② スタイルの相性が完全に裏目に出た
次に挙げたいのが、スタイルの相性問題。
天心はサウスポーで、スピードとフェイントを軸にしたボクサーファイター。
相手が噛み合えば一気に主導権を奪えるタイプです。
ただしそれは、相手にも“距離を取って戦う意思”がある場合。
今回の井上拓真は、インファイト寄りで、体ごと前に出てくるスタイル。
しかも天心が最も嫌うボディ攻撃を徹底してくるタイプでした。
これが本当にキツかった。
実際、5Rあたりから天心の動きに目に見えて疲労が出てきて、手数も減少。
途中で右構えにスイッチしたのも、「このままでは突破口がない」と感じたからでしょう。
でも、それすら拓真には通用せず。
まるで“ジャンケンでずっと相手の手を後出しされてる”ような、そんな噛み合わなさがありました。
③ “神童イメージ”の反動が大きすぎた
最後の理由は、世間の期待とのギャップ。
那須川天心という名前には、どうしても“無敗の天才”というイメージがつきまといます。
キック時代、数々の強敵を倒してきた実績があるため、
「ボクシングでもすぐ世界取れるでしょ?」という空気が一部で強かったのは事実です。
ただ、ボクシングはキックとはまったく別競技。
リズムも攻防の作り方も、スタミナの使い方さえ違います。
その中で比較的早い段階で世界挑戦まで到達した天心は、むしろ“異例”の存在。
今回の敗北も、言い換えれば“急速成長の途中で出た壁”ともいえます。
しかし世間は残酷で、
「期待してたのに」「思ったより弱かった?」という声も出てくる。
これは“神童ブランド”ゆえの宿命でしょう。
本当に弱かったのではなく、
経験不足・相性問題・期待とのギャップの三重苦が、今回の結果をつくったといえそうです。
井上拓真との違いは?経験とスタイルの差を検証
「同じ階級でここまで差が出る?」
那須川天心 vs 井上拓真の試合を観た人の多くが、そう感じたのではないでしょうか。
どちらも日本を代表する人気選手で、技術も華も一流。
でも、終盤になるにつれてジワジワと広がる差が見え始めたのは確かです。
今回は「才能の差」ではなく、“スタイルと経験の違い”に焦点を当てて、2人の違いを解き明かしていきます。
■ 井上拓真のスタイルは「削って勝つ」戦法
井上拓真のスタイルは、オーソドックススタイル(右構え)を基盤としたボクサーファイター型。
ただし特徴的なのは、そこにインファイター的な要素が色濃く混ざっているところです。
要するに、“しっかり構えて、接近して、ボディを打って削っていく”タイプ。
ド派手なKOシーンは少ないですが、ジワジワと相手を消耗させる職人的な戦い方を得意としています。
今回の試合でも、それが如実に表れていました。
序盤は天心にリズムを取られながらも、中盤以降はボディブローを軸にじわじわと逆転。
派手さはないけれど、「強い相手を倒すのがうまい」ボクサーなんですよね。
たとえば、ダメージを“一撃”で与えるタイプではなく、
相手のガソリンを少しずつ漏らしていくような戦い方。
気づけば天心の足が止まり、パンチの手数も明らかに減っていました。
■ 那須川天心は「魅せる×スピード」タイプ
一方の那須川天心は、サウスポー(左構え)を軸にしたボクサーファイター型。
そこに彼独特の、ストライカー的な“魅せる”要素が強く加わっています。
もともとキックボクシングで磨かれたスピード・タイミング・フェイントが武器。
相手の意表を突くような攻撃で会場を沸かせる、“魅せるボクサー”という印象です。
今回の試合でも、1〜4ラウンドあたりはそのスタイルが機能していました。
シャープな左ストレート、切れ味のあるフットワーク、思わず目を奪われるようなフェイント。
でも、それはあくまで「主導権を握れているうちだけ」。
ボディを狙われ始め、ペースを乱されると、得意の“魅せる展開”を作る余裕がなくなっていきました。
たとえるなら、派手な花火職人が突然火薬切れを起こしたようなもの。
華やかに始まったのに、終盤は静かに終わってしまいました。
■ 「崩さない」井上 vs 「崩しに行く」天心
この試合、根本的なアプローチの違いが如実に表れた一戦でもあります。
井上拓真は、“崩れないこと”に特化したボクシング。
自分のリズムを守り、相手の得意なパターンを潰していく堅実な戦い方です。
対する天心は、“崩すこと”に長けたスタイル。
相手の隙を突き、スピードとタイミングで意表を突く、攻撃的なスタイル。
今回はその“崩し”が通用しない相手だったため、天心が苦戦する展開になりました。
そしてもう一つ大きかったのは、引き出しの数と深さ。
井上は、ボディ攻撃、接近戦、カウンター、すべてにおいて“やられない術”を持っていました。
まさに「削って勝つ玄人スタイル」。
那須川天心はまだ8戦目。
「強いパンチ」や「見せ場」は作れても、それを90分以上の映画に仕上げる“監督経験”が足りなかったのかもしれません。
今回の試合で見えたのは、「才能の有無」ではなく「引き出しの数と深さ」。
逆に言えば、まだまだ天心が伸びしろだらけ、ということでもあります。
もし再戦があるなら?
今度は、削る・守る・耐える——そんな“地味だけど強いボクシング”を身につけた天心が見られるかもしれませんね。
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